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第18回日本糖尿病合併症学会

第18回日本糖尿病合併症学会(会長=清野裕・京都大学大学院医学研究科糖尿病・栄養内科学教授)が,2003年10月10日と11日の両日,国立京都国際会館で開催された。糖尿病合併症の成因として注目されるポリオール代謝異常やProtein Kinase C活性異常,生命予後に最も大きく影響する大血管障害の他,特に今回は,チーム医療による患者のトータルケアが重要であるという観点から,各糖尿病合併症のケアをテーマとしたシンポジウムが組まれた。医師および糖尿病療法指導士をはじめとするコメディカルスタッフ参加のもと,合併症の発症・進展予防に向けた討論がなされた。

高血圧合併時は動脈硬化予防のためインスリン抵抗性の管理が特に重要

札幌医科大学第二内科 島本和明

2型糖尿病における動脈硬化症の危険因子として高血圧の合併が指摘されている。札幌医科大学第二内科の島本和明氏は,帯広研究をはじめとするこれまでの疫学研究を検討した結果,糖尿病は心筋梗塞発症リスクを3〜4倍に,高血圧は約2倍に上昇させること,しかも高血圧と糖尿病は相互に合併しやすく,合併すると心血管死亡リスクは一層上昇することを明らかにした。また、これらの疾患に共通する背景因子として,インスリン抵抗性の存在が指摘されており,インスリン抵抗性を有する群は有さない群に比べ心血管イベントリスクが5倍高いことも示された。こうしたデータから島本氏は「2型糖尿病で,特に高血圧合併例の治療においては,動脈硬化発症予防のためインスリン抵抗性の管理を念頭におくべきである」と強調した。

糖尿病は胃食道逆流症(GERD) の危険因子

大阪大学大学院病態情報内科学 西田勉

自律神経障害を伴う糖尿病では消化管運動の異常を招きやすく,胃食道逆流症(GERD)を含む上部消化管症状の頻度が高くなることが推測される。大阪大学大学院病態情報内科学の西田勉氏らは, 2型糖尿病241例を対象に胃食道逆流症(GERD)の合併頻度についてアンケート調査を行った。その結果,GERD合併率は 25.3%と,非糖尿病群に比べ有意に高く,また,網膜症や腎症,神経障害の合併症を有する例で高い傾向が認められた。GERD合併率は病期の進展に伴い上昇したが,高度の自律神経障害を合併した例や糖尿病コントロールが極めて不良な例ではむしろ低下し,GERD症状が不顕性化することも示唆された。また,GERD発症の危険因子の検討から,経口血糖降下薬およびBMIは独立した危険因子であることが明らかになった。こうした結果から,西田氏は「糖尿病はGERDの危険因子である」と結論した。

若年の1型糖尿病性腎不全では生体腎移植を推進すべき

東京女子医科大学糖尿病センター 馬場園哲哉

糖尿病性腎不全に対する腎移植は,透析に比べQOLが良好な治療法であるが,日本での実施例は極めて少ない。東京女子医科大学糖尿病センターの馬場園哲哉氏らは,腎移植の意義を検討するため,同施設にて過去21年間に実施した糖尿病性腎不全66例に対する71回の腎移植について予後を解析した。全症例における5年生着率は71.7%,5年生存率は91.3%であり,病型別では 1型のほうが2型より有意に若年で、生存率、腎生着率ともに良好であった。1型で透析から腎移植に移行した群の5年生存率は100%であり,腎移植後に懸念される糖尿病コントロールの悪化も認めなかった。一方,透析継続群の5年生存率は70.2%と,一般にいわれる糖尿病性腎不全患者の5年生存率をはるかに上回るものの腎移植群に比べ低値であった。以上の成績から馬場園氏は「日本では死体腎移植が少ない現状を鑑みると,特に若年の1型糖尿病性腎不全では生体腎移植を推進していくべきである」と強調した。

アキレス腱反射と下肢振動覚の同時検査は病態評価にも有用

弘前大学附属病院検査部ー 杉本一博

糖尿病性神経障害の診断法として,アキレス腱反射(ART)および下肢振動覚検査を用いた簡易診断基準が提唱されているが,その検査結果が糖尿病のいかなる病態を反映しているのかは十分に検討されていない。弘前大学附属病院検査部の杉本一博氏らは, 2型糖尿病患者をARTおよび振動覚の正常・異常から4群に分け,臨床所見との関係を検討した。その結果,ARTおよび下肢振動覚の異常はそれぞれ合併症や代謝異常と特異的な関係を示すことが認められた。報告によると,ARTの異常を示す群では,インスリン分泌能が低下し,振動覚の異常を示す群ではLDL-コレステロール値および収縮期血圧が上昇していた。ART,振動覚ともに異常を示す群では糖尿病罹病期間の有意な延長,インスリン分泌能低下,心自律神経機能の低下,網膜症および腎症の合併率上昇と重症化が認められた。杉本氏は「ARTおよび下肢振動覚の同時検査は神経障害の診断のみならず,神経障害と糖尿病の病態との関連を検索する上でも簡便かつ有用な方法である」と結論した。

冠動脈硬化が腎症の進展と密接に関係

東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科 宇都宮一典

糖尿病性腎症では心血管疾患の合併率が高いが,2型糖尿病における腎症と冠動脈病変との関係については検討されていない。東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科の宇都宮一典氏らは,腎症の病期別に冠動脈石灰化指数(CS)を測定したところ,病期の進展に伴うCSの有意な上昇を認めた。一方,CSは,CS 400未満の症例に限ると年齢,大動脈脈波速度,血中LDL-コレステロール,血中炎症性サイトカインとの間に有意な正相関が認められたが,CS400以上の症例を含めた全症例を対象にすると関連性は消失した。以上より宇都宮氏は「冠動脈硬化は腎症の進展と密接な関係にある。また,CS400未満では動脈硬化と腎症の進展は密接に関連しており, その過程には炎症性サイトカインが関与するが,CS400以上では別の石灰化機序が加わっている可能性が考えられる」と述べ,心血管疾患の予防・治療には冠動脈硬化機序を考慮した対応が必要であるとした。

短期運動療法が2型糖尿病の動脈硬化を改善

大阪市立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学 横山久代

糖尿病では冠動脈性疾患の合併リスクが高く,その予防が重要な課題である。大阪市立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学の横山久代氏らは,運動が心血管リスクを低下させることに着目し,2型糖尿病23例を対象に,エルゴメータと歩行による約20日間の運動療法が動脈壁硬化に及ぼす影響およびインスリン抵抗性との関係を検討した。その結果、運動後,超音波法による総頸動脈・大腿動脈の壁硬化度(Stiffness index β)は有意に低下した。また,インスリン感受性(Clamp IR)も改善傾向を示し,Clamp IRの変化量と大腿動脈壁硬化の改善度に有意な相関が認められた。以上より横山氏は「2型糖尿病において短期運動療法はインスリン抵抗性の改善を介して動脈壁硬化を改善する」と述べた。