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第19回日本糖尿病・妊娠学会

第19回日本糖尿病・妊娠学会(会長=内山聖・新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野教授)が,2003年10月24日,25日の両日,新潟市民プラザおよびホテルイタリア軒で開催された。プログラムには,新潟大学大学院腎・膠原病内科学分野教授下条文武氏による特別講演「糖尿病性腎症の予防と治療戦略」,小児科医D.J.Pettitt氏による招請講演,シンポジウム「糖尿病をもった女性の計画妊娠」,東北大学名誉教授後藤由夫氏によるランチョンセミナー「糖尿病と性」なども組み込まれ,同学会の幅広い関連領域を網羅する形となった。一般演題は46題が採択され,最近の研究成果をめぐる熱心な意見交換が行われた。

糖尿病性腎症合併妊娠例は妊娠中毒症のハイリスクである

奈良県立医科大学産科婦人科 原田直哉

糖尿病患者の妊娠は“ハイリスク妊娠”とされるが,とりわけ腎症合併例では妊娠中毒症を起こしやすいことが,奈良県立医科大学産科婦人科の原田直哉氏らの検討で明らかになった。対象としたのは,1987〜2002年に同科で経験した糖尿病合併69妊娠で,腎症合併7妊娠,腎症非合併62妊娠という内訳だった。この2群の妊娠中毒症の発症頻度を比較したところ,腎症合併群71%,非合併群21%と,腎症合併群で高かった(p<0.05)。また,妊娠初期の血圧,腎機能検査値と妊娠中毒症の関係を調べると,腎症合併例では妊娠初期に高血圧,高クレアチニン血症,高BUN血症を呈していた例が多く,こうしたケースほど高率に妊娠中毒症を発症していた。以上の成績から原田氏は「糖尿病性腎症の合併例で,妊娠初期に高血圧や腎機能低下を示す妊婦は妊娠中毒症のリスクが高い」と強調した。

妊娠糖尿病のスクリーニング法として随時血糖と50gGCTが有望

三重大学産科婦人科 日下秀人

妊娠糖尿病を早期発見するためのスクリーニング法が求められているが,三重大学産科婦人科の日下秀人氏らは,全国28施設の共同研究の中間報告として,「現時点の検討では随時血糖の測定や50gGCT法が有望」と指摘した。今回の対象は,すでに糖尿病と診断されている患者を除外した妊婦2,266人(延べスクリーニング数2,731件)で,随時血糖,食後血糖,50gGCTのどれか1つの検査を行い,2週後に75gOGTTで確認した。その結果,妊娠糖尿病と診断されたのは2,286人中71人(3.11%)で,うち38人は妊娠初期のスクリーニングで見出された。検査法の比較では,随時血糖と50gGCTの2つが,それぞれ感度52.4%,63.6%,特異度90.2%,90.5%と優れていた。ただ,これはあくまで中間報告であり,日下氏は「今後さらに多くの症例を集積して結論を出したい」と述べた。

早期からの糖尿病管理が妊娠糖尿病の周産期予後への影響を軽減

横浜市立大学市民総合医療センター母子医療センター 大関はるか

 横浜市立大学市民総合医療センター母子医療センターでは,妊娠糖尿病(GDM)と診断されたケースに対して,リスクに応じた糖尿病管理が実施される。大関はるか氏らは,同センターで分娩した妊娠糖尿病群52例と耐糖能正常群2,238例の予後を比較し,妊娠糖尿病のリスク因子や合併症の頻度を解析した。妊娠糖尿病群では、年齢(30.3 vs 33.3歳)、BMI値(21.0 vs 24.6)が高く、在胎期間(39.4 vs 38.9週)が短かった(いずれもp<0.01)。周産期事象では,在胎期間に比して体重が重いHFD(heavy-for-date)児,弛緩出血,高ビリルビン血症の頻度は妊娠糖尿病群が有意に高かったが,帝王切開率など他の項目では差がみられなかった。また妊娠糖尿病群でHFDを認めなかった症例は,妊娠糖尿病の診断時期が,HFDを認めた症例よりも早期であることから,大関氏は,「早い時期から適切な糖尿病コントロールを開始すれば,妊娠糖尿病の周産期予後への影響は少なく,HFDも減少する」との考えを示した。

妊娠糖尿病患者は食習慣に乱れ

札幌社会保険総合病院栄養部 小松信隆

妊娠糖尿病の原因は様々だが,その1つに考えられる患者背景について札幌社会保険総合病院栄養部の小松信隆氏らが行ったアンケート調査では,妊娠糖尿病症例においては妊娠前のBMIが高く,食習慣にも乱れがあることがわかった。対象は,2002年に同院を受診し,初回栄養指導前に協力を得られた妊娠糖尿病患者(GDM)11例,糖尿病合併妊娠患者(DM)9例,正常妊婦31例である。アンケートの結果,妊娠前のBMIは,GDM26.9,DM28.9,正常妊婦20.0で,GDMはDMほどではないが,正常妊婦よりかなり高かった。また食習慣についてみると,GDMでは食事時間が不規則だったり,欠食したり,間食や夜食の習慣を持つ人が多かった。以上の成績を踏まえて小松氏は「妊娠糖尿病症例は,出産後,糖尿病に移行する可能性があり,予備軍として栄養士の介入を含めたフォローの継続が必要」と注意を促した。

糖尿病の奇形発生にbaxbcl-2のバランスの乱れが関与?

新古賀病院糖尿病内分泌内科 赤澤昭一

糖尿病の奇形発生においてはフリーラジカルが一因である,と報告してきた新古賀病院糖尿病内分泌内科の赤澤昭一氏らは,今回,アポトーシスの関与と誘導経路を検討した。糖尿病妊娠ラットをつくり,妊娠第9,10,11日に胎芽(胚)を採取した。正常ラット胎芽に比べ,糖尿病ラット胎芽ではアポトーシスを促進するbaxと抑制するbcl-2のmRNAの比が有意に高く,原始脳胞でアポトーシス陽性細胞が有意に増加していた。アポトーシス陽性細胞にはbax蛋白と下流にあるチトクロムc,caspase-3蛋白の発現が認められた。赤澤氏は「糖尿病ラット胎芽ではフリーラジカルの増加によってbax/bcl-2 mRNA比が高くなり,ミトコンドリアからチトクロムcが遊離してcaspase-3が活性化され,過剰なアポトーシスが生じるために器官形成が障害され,二分脊椎などが発生するのではないか」と述べた。

胎仔のGLUTの発現に母体の糖尿病は関与せず

京都桂病院内分泌・糖尿内科 山本泰三

妊娠時にはブドウ糖が胎仔の主なエネルギー源となるが,糖尿病妊娠ラットでは糖輸送の低下が認められる。京都桂病院内分泌・糖尿内科の山本泰三氏は,糖尿病ラットの胎仔と付属器におけるglucose transporter(GLUT)の発現について報告した。同氏らは,糖尿病ラットを正常ラットと交配した後,Day 9.5−22の胎仔ならびに付属器をNorthern Blotting法および免疫組織化学法で検討した。その結果,GLUT1−3のmRNAの発現はDay 20で組織特異的に認められ,GLUT1,GLUT2蛋白の発現はDay 11.5−20で,胎芽,原腸と神経管,血管内皮,膵β細胞,肝などに,発生段階に応じて認められた。いずれも対照群との差は認められなかった。このことから山本氏は,「ラット胎仔におけるGLUTの発現は,糖尿病による影響はなく,発育による調節を受けている」との考えを示した。