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第24回日本肥満学会(会長=齋藤康・千葉大学大学院医学研究院細胞治療学教授)が、2003年11月13日と14日の両日、千葉市の幕張メッセ国際会議場で開催された。今回のメインテーマは「肥満症−21世紀の治療学」で、それを踏まえた形で会長講演「脂肪細胞の、そして脂肪細胞で治療学を考える」、理事長特別提言「肥満症研究の展望−メタボリックシンドロームとアディポサイエンス」、シンポジウム「肥満症の治療−長期予後改善への工夫」など多彩なプログラムが組まれた。また、肥満症の治療ガイドラインを作成するためにコンセンサスカンファランスも設けられ、白熱した議論が繰り広げられた。 新しい減量指導法を提唱京都府立医科大学大学院内分泌機能制御学 梅川常和氏肥満症患者の減量をどう進めていくかは大きな課題だが、京都府立医科大学大学院内分泌機能制御学の梅川常和氏は、シンポジウム「肥満症の治療−長期予後改善への工夫」の中で、独自の減量指導法を紹介した。この指導法の第一のポイントは、患者の減量意欲を引き出すことにあり、そのため治療の意義や必要性を納得いくまで説明する。第二は肥満関連遺伝子の測定である。βアドレナリン受容体やUCP-1などの遺伝子多型を突き止めることで、患者の体質に応じたテーラーメード型の食事指導が可能になり、過食の背景にあるストレスの原因を除去すれば効果は一層増す。同グループでは実際の診療で一定の成果を上げており、梅川氏は「テーラーメードの食事療法とストレスマネージメントの併用は十分な減量効果を期待できる」と強調した。 パーソナリティ特性の理解が肥満症治療の第一歩東邦大学佐倉病院糖尿病・内分泌・代謝センター 宮下洋氏肥満患者は一見おおらかそうにみえるが、実は繊細で独特のパーソナリティを持つ人が多い。東邦大学佐倉病院糖尿病・内分泌・代謝センターの宮下洋氏は、シンポジウム「肥満症の治療−長期予後改善への工夫」の中で、そうした性格特性の理解が治療の第一歩になると指摘した。報告によると、同グループでは肥満患者のパーソナリティを探るため、ロールシャッハテストを行い、性格を分析した。その結果、自分の状態や細かいニュアンスを正確に把握できなかったり、自らの思考や行動に固執するタイプが多かった。このような患者は、入院という単純で居心地のいい場所では過剰に適応して減量もうまくいくが、社会復帰すると複雑な環境の中でリバウンドを起こしやすい。対応は難しいが、宮下氏は「まず患者の性格特性を受け入れることが大事」とし、「そのためには臨床心理士を交えたチーム医療が欠かせない」と述べた。 40代以下の女性では肥満者が減少傾向国立健康・栄養研究所 吉池信夫氏肥満者の増加は先進各国で大きな問題になっているが、わが国の場合、40代以下の女性ではむしろ減少傾向にあることが疫学調査から判明した。国立健康・栄養研究所の吉池信夫氏が教育講演「わが国における肥満の疫学−最近の動向と課題」の中で明らかにしたもので、世界の現状からみても“特異”な現象だという。同氏が用いたのは国民栄養調査のデータで、1976〜2000年までの25年間の推移を詳細に検討した。それによると、成人男性ではBMI25以上の肥満者の割合は一貫して増加していた。しかし成人女性の場合、40代以下では著明に減少しており、その他の年齢層でもほぼ減少傾向にあった。またこれに連動する形で、20〜40歳代ではBMI18未満の“やせ”も増加していた。肥満が先進国の潮流になっている中での減少は異質で吉池氏は「その原因を詳細に分析する必要がある」と述べた。 血清レプチンは長期的な体重変化、体重変動によって規定される名古屋大学大学院医学系研究科公衆衛生学 八谷寛氏血清レプチンは肥満度とよく相関するが、個人差も大きい。名古屋大学大学院医学系研究科公衆衛生学の八谷寛氏は、そうしたレプチン値の個人差が長期的な体重変化や変動によって規定されている可能性があると報告した。対象は愛知県内某企業に勤務する40〜49歳の健常男性751名(解析対象は625名)で、過去20年の検診記録が残っており、このデータに基づいて検討を行った。指標としたのは血清レプチン、肥満度(BMI)、体重変化、体重変動である。体重変化は過去の記録からピックアップした5時点(20歳からほぼ5歳刻み)の体重と年齢との回帰直線の傾き(Slope)を、体重変動はその回帰直線周囲の標準偏差に相当するRoot-mean-square-error(RMSE)を、それぞれパラメータとした。その結果、血清レプチンは肥満度と最も強い相関を示したが、肥満度とは独立して体重変化、体重変動とも有意な関係を認めた。また同じ肥満度の人でも、過去の体重の変化・変動によって血清レプチン値はかなり異なっていた。以上から八谷氏は「体重変化や変動は血清レプチン値の個人差を説明する一要因」と指摘した。 肝へのUCP-1遺伝子導入で肥満、糖尿病が改善─動物実験で明らかに東北大学創生応用医学研究センター 片桐秀樹氏肥満や糖尿病に対する遺伝子治療が注目されている。東北大学創生応用医学研究センターの片桐秀樹氏は、そうしたアプローチの1つとしてUCP-1遺伝子を肥満・糖尿病ラットに導入、肥満や脂肪肝、インスリン抵抗性の改善を認めたと報告した。UCP-1は脱共役蛋白質で、抗肥満因子として知られている。片桐氏は高脂肪食の負荷で肥満、脂肪肝、高脂血症、糖尿病を発症したラットにUCP-1発現アデノウイルスを投与し、肝におけるUCP-1の発現と病態への影響を調べた。その結果、UCP-1は肝において8日以上持続する異所性発現を認めた。そしてこのUCP-1の発現により、ラットの肥満、脂肪肝、インスリン感受性、糖尿病はいずれも著明に改善した。同氏はこの成績を踏まえて「肝へのUCP-1遺伝子導入は、肥満、糖尿病などメタボリックシンドロームの新しい治療法として期待できる」と指摘した。 同じBMIでも人種、年齢で体組成は異なる東京慈恵会医科大学糖尿病代謝内分泌内科 阪本要一氏BMIは肥満度の指標として広く用いられているが、同じBMIでも体組成は人種、年齢、顕著な差があることを、東京慈恵会医科大学糖尿病代謝内分泌内科の阪本要一氏が明らかにした。対象は一般成人で、日本人955名(男322名、女633名, J群)、白人418名(男193名/女225名、W群)、アフリカ系米国人258名(102名/156名、A群)、ヒスパニック400名(186名/214名、H群)という内訳だった。これら被験者のBMIと体脂肪率(二重X線吸収法)を求め、両者の相関性を人種、男女、年齢別に比較した。その結果、同じBMIでも体脂率は人種、年齢によって異なり、J群やH群の若年者はW群やA群に比べ高値だった。またW群やA群は、同じBMIでも加齢による体脂肪率の増加が大きかった。このようにBMIの値が同じでも体組成が異なることについて阪本氏は「遺伝、エネルギー摂取量や生活環境の違いによるところが大きい」とした。 |
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