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第51回日本心臓病学会学術集会(会長=小川聡・慶應義塾大学医学部呼吸循環器内科教授)が,「心世紀創生―For the New Cardiology Millennium」をメインテーマに2003年9月8日〜10日の3日間,東京国際フォーラムで開催された。
 「21世紀の心臓病治療」などシンポジウム7テーマ,パネルディスカッション9テーマ,ビジュアルワークショップ5テーマをはじめ,多彩な特別プログラムが組まれた。また,同時開催の第20回日本心電学会学術集会との合同シンポジウムなども行われた。一般演題は1,100題を超す応募のなかから769題が採択され,新しい研究成果をめぐって熱心な討議が展開された。

日本における大規模コホート調査「J-CADスタディ」の第2回中間報告

東京大学大学院医学系研究科 山崎力

東京大学大学院医学系研究科の山崎力氏は,虚血性心疾患患者を対象にしたわが国独自の大規模コホート調査,J-CAD(Japanese Coronary Artery Disease)スタディの第2回中間解析結果を報告した。J-CADは,全国217の循環器専門施設が進める共同研究である。14,488例(平均年齢65.6歳)を,平均421.1日追跡した結果,脳心血管イベント発症件数は1,164件(976例),イベント発症率は6.7%で,過去の認識を大きく上回る発症率が示された。J-CADの対象が,かなりのハイリスク群であることを反映した結果といえる。山崎氏によると,今回の中間解析結果からは,(1)虚血性心疾患患者における脂質,血圧,血糖のコントロールが十分でなく,これらを厳格に管理することでリスク軽減が期待できること,(2)ACE阻害薬,β遮断薬に脳心血管イベントの二次予防効果があることが示唆された。

致死性不整脈の背景にある自律神経機能の見極めが重要

富山医科薬科大学医学部第二内科 井上博

自律神経系の変化は心室性不整脈の誘因の1つである。富山医科薬科大学医学部第二内科の井上博氏は,合同シンポジウム「突然死の基礎と臨床」で,右室流出路起源の特発性心室頻拍に関する検討データを示した。この頻拍は交感神経の緊張パターンに一致して午前中と夕方に発生ピークがあり,発生直前には迷走神経の緊張低下により相対的に交感神経緊張が亢進し,R-R間隔の短縮がみられたという。井上氏は「β遮断薬により交感神経緊張を抑制し,迷走神経緊張を亢進させる介入が,大部分の致死性の心事故抑制に有効であろう」と述べた。迷走神経緊張は心室性不整脈を抑制する方向に作用する。しかし,わが国に比較的多いとされるBrugada症候群では,迷走神経緊張が心室細動の発生に関連している。こうしたことから,「背景にある自律神経機能を見極め、適切に対応することが求められる」とした。

日本女性では毎週1〜2個の鶏卵摂取が総死亡・心筋梗塞死亡を減少

滋賀医科大学循環器内科 中村保幸

滋賀医科大学循環器内科の中村保幸氏は,1万人以上を14年間追跡した長期追跡データベースのNIPPON DATA 80を用いて,鶏卵摂取量とコレステロール値との関係を検討した。合計10,106例(男性4,443例/女性5,663例)を検討した結果,女性では鶏卵摂取量と総コレステロール値とにU型の有意な関連が認められ,鶏卵摂取量が1〜2個/週の群で,総死亡,心筋梗塞死亡,癌死亡が最も少ないことが示された。一方,男性では,このような関連は認められず,他の食事の影響が示唆される結果となった。男女ともに,鶏卵をごくまれにしか摂取しない群は,高血圧患者が多いなど,高リスク群と想定された。
 中村氏は,少なくとも日本女性においては,鶏卵摂取を1〜2個/週に制限することで,血清総コレステロール値の抑制,心筋梗塞の発症減少など,健康に有益な結果が期待できるとしている。

PCI後の好中球増多は再疎通後の微小循環障害を反映

けいゆう病院内科 高橋寿由樹

急性心筋梗塞(AMI)に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の有用性は明らかだが,PCI後の好中球増多とno-reflow現象の主要因とされる微小循環障害との関連は不明である。けいゆう病院内科の高橋寿由樹氏らは,発症12時間以内にPCIにより再灌流が得られた初回ST上昇型AMI 106例を対象に,その関連性を検討した。
 PCI後の好中球数9,500/mm3以上の増多群(27例)は非増多群(79例)に比べ,入院時とPCI後1時間のST上昇の総和から求めたST偏位改善率が有意に低く,CRPの最大値が有意に高値であった。増多群ではまた,AMI発症1年以内に再狭窄を含む何らかの心血管イベントを起こすリスクが有意に高かった。高橋氏は「PCI後の好中球増多は再灌流後の微小循環障害を反映し,AMI後の心血管事故と関連する可能性がある」と指摘した。

陳旧性心筋梗塞症例における睡眠時無呼吸は致死性不整脈の引き金に

徳島大学臓器病態治療医学 蔭山徳人

循環器疾患を有する例では,閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の合併は予後を規定する可能性がある。徳島大学臓器病態治療医学の蔭山徳人氏らは,陳旧性心筋梗塞(OMI)においてOSASがQTの差に及ぼす影響を検討した。対象は健常者20例とOMI症例30例で,携帯型睡眠ポリグラフにより口鼻呼吸,経皮的動脈酸素飽和度(sPO2)などを連続記録した。また,デジタルホルター心電図を記録し,CM5誘導とCM1誘導のQTの差(QT dispersion)を解析した。
 OSASを合併したOMI症例11例では,睡眠時無呼吸時にsPO2の低下とともにQT dispersionが有意に増大した。この11例のQT dispersion増大の程度は,健常者,OSAS非合併OMI症例に比べ有意に大きかった。蔭山氏は「OMI症例における睡眠時無呼吸は致死性不整脈発生の引き金となり,新たな循環器系合併症の出現との関連性が示唆された」と述べた。